トップへ » 初めての方へ » 院長コラム » 実は文明生活こそ歯の大敵。

実は文明生活こそ歯の大敵。

【ライオンも歯で命を落とす】
ヒトの歯について考える前に、自然の中で生きている動物を考えてみましょう。動物は、草食動物であろうが肉食動物であろうが、餌が捕れなくなつたり、食べられなくなつたりすれば、それは確実に死に繋がります。

以前、テレビのドキュメンタリー番組で、アフリカのライオンが、食い漁った動物の骨が牙に挟まって餌を捕れなくなり、どんどん衰弱していく映像を見たことがありますが、動物にとって、歯はまさしく自分の生命を支える大切な器官です。

そのため、自然の中で生きている動物には、本来、死ぬまで健康な歯でいられる仕組みが備わっています。たとえば、唾液の殺菌作用とか洗い流し作用などの自浄作用によって、ヒトのように虫歯になったりしません。

今は亡き農学博士の川島四郎氏は、私たちの食生活に何度も警鐘を鳴らしてくださった方ですが、九十歳になってもなお、アフリカに度々出かけ、原住民と生活をともにされながら、彼らの食生活を観察・研究されました。

【葉っぱをバリバリ食べてきれいな歯】
川島博士は、まず、歯ブラシもしないのに彼らの歯が丈まで真っ白であり、そして歯並びも整っているのに驚きました。 

原住民の食生活をつぶさに観察すると、元来狩猟採集民族である彼らは、今の私たちではとても食べられそうもない木の根や硬い葉っぱを、生のままふんだんに食べます。それらの植物の繊維質が、歯ブラシをするのと同じ働きをして、歯をいつもきれいにしてくれることがわかりました。

つまり、ヒトの歯も、動物と同じように生命を維持する上で必要不可欠な器官で、簡単に抜けたりはしません。ところが、そうした食生活を続けてきた彼らの社会に、一度私たちと同様な食文化が入り込むとどうなるのでしょうか。 

アメリカの歯科医ウエンストン・プライスという人が、世界の一四の原住民の実態を調査し、驚きとしかいいようのない報告をしています。歯が健全に発達していたアフリカの原住民の顔の骨格は、元々あごがしっかり張った○字型をしていました。

【柔らかい食べ物で歯周病にも】
ところが、先進国の私たちが現在食べているような食生活に変わり、見事にあごが細くなってV字型になり、顔自体の形も表情も変わってしまいました。

歯並びは悪くなり、虫歯だらけになりました。そして、真っ白だった歯も黒っぽくなり、歯茎が退化して歯が露出し、歯肉は腫れ、まさに歯周病(歯槽膿漏)の状態に悩まされるようになってしまいました。人間が食べ物をおいしく食べやすいように工夫してきた長年の努力が、ヒトが本来もっていた自然のカを壊してしまったということです。

【歯は使ってこそ価値がある】
人間はいつ頃から虫歯に悩んだのか、人類最古の文化の発祥地といわれる古代バビロニア(紀元前三〇〇〇年頃)の時代には、既に虫歯の存在が確認されています。

虫歯の痛みをしずめる呪文が残っています。めったにない病気なら、呪文までできるわけがありません。しかも、都市に住む富裕な人程、虫歯や歯周病に悩まされていました。生の食べ物を歯で噛み砕き、食べることはなかなか大変なことです。人間は知恵がありますから、なんとかして楽に食べられるように工夫してきました。

そのうち、食べ物を食べやすい大きさに切ったり、すりつぶしたり、火を通して柔らかく煮たり焼いたりするようになり、おそらく食べることそのものを楽しむようになったと思います。ところが、虫歯や歯周病に悩まされ始めます。 

では、なぜ食べやすいものを食べると虫歯や歯周病になるのでしょうか。
ペットフードのイヌやネコも歯周病に噛む力や回数が減ると、なぜ虫歯や歯周病になるのでしょうか。 

虫歯や歯周病の原因になる細菌は、ある日突然、人間の口の中に出現したものではありません。大昔から人間の口の中に、口腔内常在菌として存在していました。それ自体は、たとえロの中にあっても問遁とならない当たり前の細菌です。人間が、自然なままの食べ物を回数をかけて歯で噛みつぶして食べてさえいれば、動物と同じように細菌は落とされ、唾液が沢山出て食ベカスまで洗い流してくれていました。

食べ物を柔らかく食べやすい状態に調理して、あまり噛まずに食べる習慣がつきますと、この自浄作用は人間のロから失われていきます。家の中で飼われるイヌやネコなどのペットも、噛まずに食べられる缶詰のエサばかりですと、必ず歯周病になるといいます。


トップへ » 初めての方へ » 院長コラム » 実は文明生活こそ歯の大敵。


コールバック予約