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2009年9月10日
はじめに
日本では交通事故による死亡者が昭和45年1万7千人を頂点に平成8年からようやく1万人を下まわりました。
車社会のドイツでも、交通事故の多さでは、日本とたいして変わらなかった時期がありました。
なんとか交通事故を減らそうと、日本もドイツもさまざまな工夫をしたのです。
日本は、交通規則を厳しくして、取り締まりに力を注ぎました。
一方、ドイツは車運転のマナーを徹底的に若者に教えたのです。
結果はどうでしょう。
日本は死亡者数は減少していますが、事故そのものの件数はあまり減っていません。
厳しい罰則の効果は大して現れません。
ところが、ドイツでは交通事故が激減したのです。
かつて、ドイツも日本と同じように敗戦の廃墟の中から、同じように工業に力を注いで復興を遂げました。
ですから、比較されることの多い国ですが、国民性は非常に異なり、その違いはいろいろなところにあらわれています。
日本では、交通事故は「なくすのではなく、取り締まるもの」として、考えられてきたのではないでしょうか。
国民を信頼して自覚をうながすのではなく、「規則を破ったら罰金ですよ」と脅かす方法がとられています。
それと同じことが、虫歯予防についてもいえます。
日本の虫歯へのとりくみは、学校検診にあらわれているように、虫歯は「なくすもの」ではなく「治療するもの」なのです。
その結果、たしかに虫歯の罹患者は減っています。
しかし、それは虫歯にならなくなったのではなく、治療済みの歯が多いということなのです。
ヨーロッパの豊かな国で、現在、虫歯になる子どもの数は激減しています。
「虫歯がなぜできるのか」
「虫歯を予防する効果的な方法はないのか」
「歯ブラシに頼っているだけでは予防できないが、どうすればよいのか」
「国民の払う大切な税金で医療費をまかなうには、どうしても虫歯をなくすことが必要だ」
このように考えたのかどうかは別にして、明らかに虫歯をなくす努力が徹底され、社会的な常識になったということでしょう。
日本が、交通事故対策と同じ失敗をくり返さないことを願わずにはいられません。
じつは文明生活こそ歯の大敵
【ライオンも歯で命を落とす】
ヒトの歯について考える前に、自然の中で生きている動物を考えてみましょう。
動物は、草食動物であろうが肉食動物であろうが、餌がとれなくなつたり食べられなくなつたりすれば、それは確実に死につながります。
以前、テレビのドキュメンタリー番組で、アフリカのライオンが、食い漁った動物の骨が牙にはさまって餌をとれなくなり、どんどん衰弱していく映像を見たことがありますが、動物にとって、歯はまさしく自分の生命を支える大切な器官です。
ですから、自然の中で生きている動物には、本来、死ぬまで健康な歯でいられる仕組みがそなわっているのです。
たとえば、唾液の殺菌作用とか洗い流し作用などの自浄作用によって、ヒトのように虫歯になったりしません。
いまは亡き農学博士の川島四郎氏は、私たちの食生活に何度も警鐘を鳴らしてくださった方ですが、九十歳になってもなお、アフリカにたびたび出かけ、原住民と生活をともにされながら、彼らの食生活を観察・研究されました。
【葉っぱをバリバリ食べてきれいな歯】
川島博士はまず、歯ブラシもしないのに、彼らの歯が丈まで真っ白、そして歯並びも整っているのに驚きました。
原住民の食生活をつぶさに観察してみると、もともと狩猟採集民族である彼らは、いまの私たちではとても食べられそうもない木の根や硬い葉っぱを、生のままふんだんに食べます。
それらの植物の繊維質が、歯ブラシをするのと同じ働きをして、歯をいつもきれいにしてくれるのだとわかりました。
つまり、ヒトの歯も、動物と同じように生命を維持するうえで必要不可欠な器官で、簡単に抜けてしまったりはしないものなのです。
ところが、そうした食生活をつづけてきた彼らの社会に、いったん私たちと同じような食文化がはいりこむとどうなるのでしょうか。
アメリカの歯科医ウエンストン・プライスという人が、世界の一四の原住民の実態を調査し、驚きとしかいいようのない報告をしています。
歯が健全に発達していたアフリカの原住民の顔の骨格は、もともとあごがしっかり張ったじ字型をしていました。
【やわらかい食べ物で歯周病にも】
ところが、先進国の私たちがいま食べているような食生活にかわつて、みごとにあごが細くなってⅤ字型になり、顔自体の形も表情もかわってしまったのです。
歯並びは悪くなり、虫歯だらけ、真っ白だった歯も黒っぼくなり、歯ぐきが退化して歯が露出し、歯肉ははれ、まさに歯周病(歯槽膿漏) の状態に悩まされるようになってしまったのです。
人間が食べ物をおいしく食べやすいように工夫してきた長年の努力が、ヒトが本来もっていた自然のカを壊してしまったということです。
【歯は使ってこそ価値がある】
人間はいつごろから虫歯に悩んだのか人類最古の文化の発祥地といわれる古代バビロニア(紀元前三〇〇〇年ごろ)の時代には、すでに虫歯があったことが確認されています。
虫歯の痛みをしずめる呪文が残っているのです。めったにない病気なら、呪文までできるわけがありません。
しかも、都市に住む富裕な人ほど、虫歯や歯周病に悩まされていました。
生の食べ物を歯でかみ砕き、食べることはなかなかたいへんなことです。
人間は知恵がありますから、なんとかして楽に食べられるように工夫してきたのです。
そのうち、食べ物を食べやすい大きさに切ったり、すりつぶしたり、火を通してやわらかく煮たり焼いたりするようになり、おそらく食べることそのものを楽しむようになったのだと思います。
ところが、虫歯や歯周病に悩まされはじめるのです。
では、なぜ食べやすいものを食べると虫歯や歯周病になるのでしょう。
ペットフードのイヌやネコも歯周病にかむ力や回数が減ると、なぜ虫歯や歯周病になるのでしょう。
虫歯や歯周病の原因になる細菌は、ある日突然、人間の口の中に出現したのではないのです。
大昔から人間の口の中に、口腔内常在菌として存在していました。
それ自体は、たとえロの中にあっても問遁とならない当たり前の細菌です。
人間が、自然なままの食べ物を回数をかけて歯でかみつぶして食べてさえいれば、動物と同じように細菌は落とされ、唾液がたくさん出て食ベカスまで洗い流してくれていたのです。
食べ物をやわらかく食べやすい状態に調理して、あまりかまずに食べる習慣がつくと、この自浄作用は人間のロから失われていきます。
家の中で飼われるイヌやネコなどのペットも、かまずに食べられる缶詰のエサばかりですと、かならず歯周病になるといいます。
かむ食生活を取り戻す
【自分の歯で食べるのがおいしい】
「歯はダメになっても、入れ歯(義歯) があるから安心」と思っている人は少なくないと思います。
しかし、天然の歯と入れ歯では、かめる程度がまったく違います。
入れ歯の場合、かむカは、よくて70%、悪い場合はなんと7%にまで落ちてしまいます。
寝たきりの老人の歯を治したら、元気になって、ふたたび歩くことができるようになったという例さえあります。
これは、いろいろなことを意味しているように思えます。
つまり、どんな栄養分をからだにとりいれるにしても、管で流し込むのと口から
食べるのとではまったく違うはずです。
歯あるいは入れ歯のよしあしによって、しっかり噛むことができる場合と、
ほとんど飲み込んでしまう場合とでは、その栄養の吸収力も違うということです。
さらに、かむことによる脳への刺激も見逃せないことです。
食べる楽しみが長寿をもたらす歯の抜けた歯ぐきはどんどんやせていき、個人差はあるものの念入りに入れ歯を作ってもすぐ合わなくなり、食事をするたびに入れ歯がずれて痛む人が多いのです。
老後の大きな楽しみのひとつである食べることが、苦痛になってしまうのかどうかで、
生きる喜びが違ってきます。
食べることの楽しみが失われると、痴呆症状につながっていく人さえいるのです。
歯が悪くなってから、気がついても遅いとしかいえません。
それこそ子ども時代から歯の健康に努力しなければいけないのです。
平均寿命が延びた分だけ、「歯を守る」という意識を早くから確かなものにすることが大切です。
人間も本来、一生と歯の寿命が同じであるはずなのですから、努力次第ではできないことではありません。
それにはなによりも、「かむ」食生活をとりもどすことです。
歯のありがたさをいつも考えよう
【いまからでも、歯科医へ向かおう】
だれでも、健康でりんごを丸ごとかじったり、硬い干し魚をポリポリ食べられるような時には、歯の存在を気にもとめないものです。
ところが歯がなくなった方は、入れ歯をいれるにいたるまでに、さんざんかめない状態を我慢している事もあり、自分の歯があったらどんなにかよかっただろうと、失われた歯を惜しむようになるのです。
自分の歯があったときはもっとよくかめていたことや、また食べ物がもっとおいしかったことに気づくからです。
しかし、歯がなくなってから歯に感謝しても、ほんとうは遅きに失するというものです。
総入れ歯になるまでには、それなりの経過があるはずです。
1本でも虫歯になったら、あるいは歯ぐきから血が出るような歯周病になったら、それは天の声だと思ってください。
すぐに歯科医のもとへ行き、どうすれば歯を守ることができるのか、歯に対して「ちょっとした関心」をもつように心がけることが大切でしょう。
【かむ力を高める歯の健康】
歯は一度でき上がったら、自ら成長したり、変形することはありません。
したがって、歯胚ができ、石灰化がはじまる時期には十分な栄養が必要です。
歯の成長には、カルシウム、リン、ビタミンA・C・Dなどが必要です。
また、甲状腺、脳下垂体、副腎、上皮小体からのホルモンの分泌も正常でなければなりません。
つまり、栄養と健康がじょうぶな歯が育つために欠かせないわけです。
歯が欠けたり抜けたり、あるいは歯並びが悪かったりすると、かむ力が低下します。
歯の欠損を治し、歯並びの矯正をして虫歯を防ぐことが、かむ力の低下を防ぎ、ひいては体全体の健康を維持することができるのです。
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