「歯が割れるなんて自分には関係ない」 と思っていませんか?
交通事故や転倒といった不意の外傷だけでなく、日々の食いしばりや歯ぎしりが原因で歯に亀裂が入り、最終的に歯が割れてしまうことがあります。
口を開けた時に見える歯が割れた場合を歯冠破折(しかんはせつ)、歯ぐきに埋まった歯の根が割れた場合を歯根破折(しこんはせつ)と呼びます。歯の破折は歯周病、虫歯に続き歯を失う原因の3位とされ、珍しい症状ではありません。
本コラムでは、事故や食いしばりにより歯に異常が起こる原因や、それに応じた治療法について詳しく解説します。歯を守るための予防法や適切な対処法を知り、健康な歯を保ちましょう。
歯の破折の主な原因
歯の破折には様々な原因がありますが、主なものは下記の3つです。
・歯ぎしり、食いしばり
・転倒や交通事故・スポーツの怪我
・噛み合わせが良くない歯並び
転倒や交通事故・スポーツの怪我で歯が割れるケース
交通事故や転倒、コンタクトスポーツのアクシデントなどの外的要因は、歯が割れる原因の一つです。特に、事故や転倒で顔・口元を強く打ち付けた場合、前歯が割れ口腔内に怪我をするケースがよく見受けられます。
また、人体は強い衝撃を受けると反射的に奥歯を強く噛み締めるため、直接ダメージを受けていない奥歯が割れることもあります。神経のない歯や人工歯は割れやすく、注意が必要です。
さらに、歯ぐきに埋まっている歯根が裂けたり割れたりしていても、痛みを感じない場合があります。そのため、異変に気付かないまま時間が経過し、歯や歯ぐきに違和感を覚えたり、ニキビのような腫れが生じて初めて歯根の損傷に気が付くケースも少なくありません。
歯ぎしり・食いしばりなど無意識の癖で歯が割れるケース
習慣的な歯ぎしりや食いしばりも、歯が割れる大きな原因の1つです。
日本人の約7割が無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりをしているといわれており、特に睡眠中や、集中している時に起こりやすいとされています。
歯ぎしりや食いしばりによって歯にかかる力は非常に強く、体重の2~5倍、場合によっては100kg以上になることもあります。この強い力が継続的に加わることで、歯が耐えられなくなり、ある日突然割れることがあります。
特に注意が必要なのは、虫歯の治療を受けた歯や神経を抜いた歯です。これらの歯は健康な歯と比べて構造が弱く、耐久性が低くなっているため、割れやすい傾向があります。
歯冠破折・歯根破折|それぞれの治療法とは
見えている部分の歯が割れる「歯冠破折」の場合、コンポジット・レジン、インレーやアンレーと呼ばれる詰め物、またクラウン(被せ物)を使った治療を行います。
一方、歯ぐきの中にある歯の根が割れている「歯根破折」の場合は、口腔内接着法もしくは口腔外接着法(再植法)が選択されます。いずれも、象牙質を特異的に接着させることのできる4META-TBBレジンという生体接着剤が使用されます。
割れや亀裂が小さい場合は、この接着剤を使って口の中で直接修復する口腔内接着法が用いられます。
大きな割れや裂け目がある場合は、一度歯を抜いて外で修復し、再び元の位置に戻す口腔外接着法(再植法)が適応されます。
ただし、歯の損傷が重度の場合は修復が難しく、やむを得ず抜歯を選択することもあります。歯の状態に応じた適切な治療が重要です。
割れた歯は自然には治りません。放置すると、割れた歯を失うリスクが高まるだけでなく、周りの健康な歯にも悪影響を与えることがあります。
割れた歯の治療は早期対応がカギとなるため、速やかに歯科医院を受診しましょう。
Q1:折れた歯の破片はどうすればよいですか?
A1:折れた歯の破片を直接水で洗うのは避けてください。歯の破片を牛乳や生理食塩水に浸して保管するのが最適です。ただし、用意が難しい場合は、ひとまず口に含んでおくのも有効です。折れた歯を持参してできるだけ早期に歯科医院を受診すれば、歯を元に戻せる可能性が高まります。
Q2:折れた歯の治療は保険適用ですか?
A1:歯根破折の治療は、抜歯以外は保険適用外(自費診療)です。
歯冠破折であれば、歯科用樹脂のコンポレットレジンで欠けた部分を修復する治療が保険適用で受けられます。また、前歯の範囲であれば硬質レジンと呼ばれる被せ物も入れられます。歯を戻すのが難しい場合の抜歯も保険適用です。