鏡で歯を見たとき、歯にヒビが入っていることに気づいても、痛みがなければ放置してしまうかもしれません。
しかし、その自己判断が将来的に大きな問題を引き起こす可能性があります。
結論から言うと、歯のヒビは自然に治ることはありません。放置すると、下記のような危険があります。
・ヒビから細菌が侵入し、歯の内部が虫歯になる
・食事中に突然歯が欠けたり、割れたりする
・神経のある歯では鋭い痛みに襲われる
・最終的に抜歯せざるを得ない状況になる
特に、下記の症状がある場合は直ぐに歯科医院を受診しましょう。
・冷たいものや熱いものを口にすると歯がしみる
・噛んだ瞬間に「ピキッ」と鋭い痛みが走る
・何もしていなくてもズキズキとした痛みを感じる
・ヒビ周辺の歯茎が赤く腫れている
この記事では、歯のヒビを放置することに伴う危険性や、適切な対処法について詳しく解説します。
歯のヒビは放置NG?自己判断で放置するのが危険な理由
歯に入ったヒビは、骨折のように自然に治ることはありません。
放置するとヒビが徐々に深くなり、そこから細菌が侵入しやすくなります。
その結果、歯の内部で虫歯が進行したり、歯が突然割れたりするリスクが高まります。
最悪の場合、歯を保存できず抜歯に至るケースも少なくないため、自己判断で放置することは非常に危険です。
歯のヒビを放置し続けるとどうなる?起こりうる4つの最悪の結末
歯のヒビを軽視して放置を続けると、様々な深刻なトラブルを引き起こします。
初めは冷たいものがしみる程度の症状かもしれませんが、徐々に悪化していくことがほとんどです。
最終的には耐えがたい痛みや歯の破折を招き、大切な歯を失うという最悪の結末を迎える可能性も十分に考えられます。
ヒビから細菌が侵入し、歯の内部が虫歯になる
歯の表面を覆うエナメル質にヒビが入ると、そこが細菌の侵入口となります。
ヒビが象牙質まで達すると、内部で虫歯が静かに進行します。
歯は一度傷つくと皮膚のように再生しないため、ヒビが自然に治ることはありません。
内部で進行する虫歯は自覚症状が出にくく、気づいた時には神経にまで達していることも珍しくありません。
食事中に突然歯が欠けたり、割れたりする
ヒビが入った歯は、健康な歯に比べて強度が著しく低下しています。
そのため、食事中に硬いものを噛んだ際の衝撃が原因で、ある日突然大きく欠けたり、歯が垂直に割れたりすることがあります。
日常のささいな力が、歯を失う致命的なダメージの引き金になるのです。
神経にまで達する激しい痛みに襲われる
ヒビが歯の中心部にある神経(歯髄)にまで到達すると、歯髄炎という状態を引き起こし、何もしなくてもズキズキと脈打つような激しい痛みに襲われます。
この段階になると、多くの場合で根管治療という神経を取り除く治療法が必要になります。
この治療は非常に複雑で、通院回数も多くかかる傾向にあります。
最終的に抜歯せざるを得ない状況になる
ヒビが歯の根まで深く達してしまった場合や、歯の大部分が割れてしまった場合、歯を保存することが極めて困難になります。
細菌感染が顎の骨にまで広がってしまうと、周囲の歯や組織への悪影響も考慮し、最終的な手段として抜歯を選択せざるを得ない状況になります。
こんな症状は要注意!すぐに歯医者へ行くべき危険度の高いサイン
歯のヒビに気づいても、痛みがなければ様子を見てしまうかもしれません。
しかし、特定のサインが現れた場合、それは歯が発する危険信号であり、緊急性が高い状態を示しています。
これから挙げる症状に一つでも心当たりがあれば、自己判断で放置せず、速やかに歯科医院を受診することを強く推奨します。
冷たいものや熱いものを口にすると歯がしみる
温度変化のある飲食物を口にした際に歯がしみるのは、ヒビがエナメル質の内側にある象牙質にまで達している可能性を示すサインです。
象牙質には歯の神経につながる無数の微細な管(象牙細管)が通っているため、外部からの刺激が神経に直接伝わりやすくなり、一過性の鋭い痛みとして感じられます。
噛んだ瞬間に「ピキッ」と鋭い痛みが走る
咬合痛(こうごうつう)とも呼ばれるこの症状は、食べ物を噛んだ瞬間に特定の場所で「ピキッ」とした電気が走るような鋭い痛みが特徴です。
これは、噛む力によってヒビの部分がわずかにたわんで開閉し、内部の神経を直接刺激するために起こります。
ヒビが進行していることを示す典型的なサインの一つです。
何もしていなくてもズキズキとした痛みを感じる
食事をしていない時や、特に何も刺激を与えていないにもかかわらず、ズキズキとした拍動性の痛み(自発痛)を感じる場合、ヒビから侵入した細菌によって歯の神経が炎症を起こしている(歯髄炎)可能性が非常に高いです。
これは緊急性が高い状態で、放置すると炎症がさらに悪化するため、早急な治療介入が求められます。
ヒビ周辺の歯茎が赤く腫れている
ヒビが入っている歯の周囲の歯茎が赤く腫れたり、触るとブヨブヨしたり、出血したりする場合、ヒビが歯根にまで及んでいる可能性が疑われます。
歯根破折を起こしていると、その隙間から細菌が歯周組織に侵入して炎症を引き起こします。
放置すると歯を支える顎の骨が溶ける原因にもなります。
歯に入ったヒビは自然治癒する?残念ながら元通りにはなりません
骨が折れた場合は再生して元通りにつながりますが、歯は一度入ってしまったヒビが自然に治癒することはありません。
唾液に含まれる成分による再石灰化作用は、あくまでごく初期の虫歯を修復する働きであり、物理的に生じた亀裂を埋めたり、歯の組織を再生させたりする力はありません。
なぜ歯にヒビが?日常生活に潜む3つの主な原因
歯にヒビが入る原因は一つだけではありません。
多くの場合、日常生活の中に潜む何気ない習慣や癖が、歯にダメージを蓄積させる原因となっています。
代表的な3つの原因を理解することで、ヒビのリスクを減らし、今後の予防につなげることが可能です。
睡眠中の歯ぎしりや無意識の食いしばり
睡眠中や日中に無意識に行う歯ぎしりや食いしばりは歯に自分の体重以上の非常に強い力を継続的にかけてしまいます。
食事の際に食べ物を噛む力よりもはるかに強いこの過剰な力が歯の表面にマイクロクラックと呼ばれる目に見えないほどの微細なヒビを生じさせる最大の原因と考えられています。
硬い食べ物を噛んだときにかかる過度な負担
氷を噛み砕く、飴をガリガリと噛む、ナッツ類や骨付き肉などの硬い食品を好んで食べる習慣は、歯に瞬間的に大きな衝撃と負担をかけます。
特に奥歯は噛む力が最も集中する部位であり、このような習慣を続けることで、歯にヒビが入ったり、時には大きく欠けてしまったりするリスクが高まります。
過去の歯科治療で詰め物をした歯の劣化
過去に虫歯治療で入れた金属の詰め物は、冷たいものや熱いものによる温度変化でわずかに膨張・収縮を繰り返します。
長年使用するうちに、この金属の変性と歯質との間で微細な隙間が生じたり、詰め物が楔のように歯を内側から押し広げる力がかかったりして、ヒビの原因となることがあります。
歯科医院ではどんな治療をする?歯のヒビの進行度別の治療法
歯科医院における歯のヒビの治療は、ヒビの深さ、場所、そして痛みやしみるなどの自覚症状の有無によって大きく異なります。
検査によってヒビの進行度を正確に診断し、それぞれの状態に合わせて、主に3段階の治療法の中から最適なものが選択されます。
【軽度の場合】ヒビが広がらないように樹脂で表面を保護する
ヒビが歯の最表面のエナメル質にとどまっており、症状がない場合は、ヒビがそれ以上進行しないように予防的な処置を行うことがあります。
具体的には、ヒビの部分を歯科用の接着剤でコーティングしたり、CR(コンポジットレジン)という白い樹脂を詰めて表面を滑らかにしたりします。
歯を削る量は最小限で済みます。
【中度の場合】詰め物や被せ物で歯全体を補強する
ヒビが象牙質まで達しており、しみたり噛んだ時に痛みを感じたりする症状がある場合、それ以上の悪化や歯の破折を防ぐために、歯を補強する治療が必要になります。
部分的な詰め物(インレー)や、歯全体を覆う被せ物(クラウン)を装着することで、歯にかかる力を分散させ、歯を保護します。
【重度の場合】歯の神経を抜く根管治療や抜歯を行う
ヒビが歯の神経(歯髄)にまで達して痛みを伴う場合は、感染した歯髄を取り除く根管治療を行います。
しかし、ヒビが歯根まで深く達している場合や、歯が大きく割れてしまい保存が不可能と判断されたケースでは、周囲の組織への影響を考慮し、残念ながら抜歯が最終的な選択肢となります。
歯医者に「様子を見ましょう」と言われたのはなぜ?治療が不要なヒビの条件
歯科医院を受診した際に、医師から「様子を見ましょう」と言われることがあります。
これは、ヒビがごく表層に限局しており、現時点では積極的に削るなどの治療介入を行うリスクの方が大きいと判断された場合です。
治療が不要と判断されるヒビには、主に以下の3つの条件が挙げられます。
歯の表面(エナメル質)にとどまる浅いヒビである
ヒビが歯の最も外側を覆う硬い組織であるエナメル質に限局している場合、これはマイクロクラックやエナメル質クラックと呼ばれます。
加齢などにより多くの人に見られるもので、すぐに細菌感染や歯の破折につながる可能性は低いと判断されるため、定期的な観察で進行がないかを確認します。
痛みやしみるなどの自覚症状がまったくない
ヒビが存在していても、冷たいものや熱いものでしみたり、噛んだ時に痛みを感じたりといった自覚症状が全くない場合は、ヒビが神経に影響を与えていない表層的なものと判断できます。
このような無症状のケースでは、積極的な治療は行わず、定期検診で経過を観察することが一般的です。
レントゲン検査で歯の内部に異常が見られない
歯科用のデンタルレントゲンを撮影し、歯の内部や歯根の先に異常がないかを確認することも重要な診断基準です。
レントゲン写真上で、ヒビに起因する虫歯の影や、歯根の周囲に炎症による病変が見られない場合、ヒビは深刻な状態ではないと判断され、経過観察となることがあります。
歯のヒビの放置に関するよくある質問
ここでは歯のヒビを放置することに関して、患者さんからよく寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。
ご自身の状況と照らし合わせながら、疑問や不安の解消にお役立てください。
痛みがなくても歯のヒビはすぐに受診すべきですか?
はい、すぐに受診すべきです。
痛みがないヒビでも、内部で問題が進行している可能性があります。
自己判断は危険であり、ヒビの深さや状態を歯科医師に正確に診断してもらうことが重要です。放置して重症化する前に早期発見・早期対応することが、歯を守るために最も大切です。
歯のヒビの治療費は保険適用されますか?
ほとんどの治療は保険適用されます。
CR充填や保険が適用される金属・プラスチック製の詰め物や被せ物、根管治療、抜歯は保険診療の範囲内です。
ただし、セラミックなどの審美性や耐久性を追求した素材を選択した場合は、自費診療となり費用は高額になります。
ヒビを悪化させないために日常生活で気をつけることはありますか?
質の良い睡眠をとること、硬い食べ物を極力避けること、歯ぎしりや食いしばりの自覚がある場合は、就寝時にマウスピース装着することが有効です。
噛み合わせを診断し、調整を行う、矯正治療で力の伝達を最適化する事を推奨します。
また、無意識に片側だけで噛む癖がある場合は、左右均等に負荷を分散させるように意識することも、ヒビの悪化を防ぐ上で重要です。
まとめ:歯のヒビは自己判断せず、まずは歯科医師に相談を
歯のヒビは、たとえ痛みがなくても放置することで歯の破折や抜歯といった深刻な事態を招く可能性がある、軽視できないサインです。
この記事で紹介した情報をもとに、ご自身の歯の状態に少しでも不安を感じたら、自己判断で様子を見るのではなく、まずは歯科医院で専門的な診断を受けることが、大切な歯を守るための最善策です。