インプラント治療は優れた治療法ですが、失敗例も存在します。
主な失敗例は下記の5つです。
・インプラントがぐらつく、抜ける
・インプラント周囲炎にかかってしまう
・神経を傷つけてしまう
・見た目が不自然になってしまう
・術後の痛みや腫れが長引いてしまう
これらの失敗の原因は、【技術的な問題】+【生活習慣やメンテナンス不足】 の2つが重なったときに起こるケースがほとんどです。
本記事では、インプラント治療で起こりやすい失敗例や原因をわかりやすく解説し、後悔しないための具体的な対策を歯科医の視点から紹介します。
「インプラントを検討しているけど不安」 「治療を受けたけど違和感がある」 という方は、ぜひご参考にしてください。正しい知識を持つことで、インプラントを長く快適に使い続けることができます。
インプラント治療の失敗例とは?
インプラント治療は成功率が高い治療法として知られていますが、前述のとおり稀に失敗とみなされるケースも存在します。
具体的な失敗例としては、インプラントが顎の骨にうまく結合しない「インプラントの脱落」があげられます。これは、手術時の感染症や、喫煙、糖尿病などの全身疾患が影響することがあります。
また、インプラント周囲の歯茎や骨が炎症を起こす「インプラント周囲炎」も失敗例の一つです。インプラント周囲炎は、歯周病と似た症状を示し、進行するとインプラントがぐらついたり、最終的に脱落したりする原因となります。
さらに、手術後の神経損傷も失敗と捉えられることがあります。
特に下顎にインプラントを埋入する際に、下顎管の中を通る神経を傷つけてしまい、唇や舌にしびれが残るケースです。これは非常に稀なケースですが、患者さんの生活の質に大きく影響を与える可能性があります。
また、インプラントの埋入位置が適切でなかったり、かみ合わせの調整が不十分だったりすることで、かみ合わせに違和感が生じたり、インプラント周囲の歯に負担がかかったりすることも失敗例に含まれます。
見た目に関する問題も起こり得ます。例えば、インプラントと天然歯の色の違いや、歯茎の退縮によってインプラントの金属部分が見えてしまうといった審美的な不満も、患者さんにとっては失敗と感じられることがあります。これらの失敗例は、事前の精密検査や歯科医師の技術、そして患者さん自身の適切なアフターケアによってリスクを低減できます。
インプラント治療の失敗を防ぐために
インプラント治療の成功率を高めるためには、患者さん自身の心がけも重要です。
インプラント失敗を避けるためには、日頃からの体調管理が不可欠となります。健康な状態を維持することで、歯のインプラント治療をスムーズに進めることが可能となります。
特に、喫煙はインプラント周囲炎のリスクを高めることが明らかになっているため、禁煙を強く推奨いたします。
また、インプラント治療を受ける前から、ナイトガードの装着を習慣化することも大切です。歯ぎしりや食いしばりといった、歯に過度な負担をかける問題からインプラントや他の歯を守るために非常に有効な手段です。
インプラント治療後は、これまでとは異なるセルフケアが必要となります。
毎日のブラッシング時間を増やし、デンタルフロスや歯間ブラシを積極的に使用するなど、より丁寧な口腔ケアを心がけましょう。これにより、インプラント周囲炎などのリスクを低減し、インプラントの寿命を延ばすことにつながります。ご自身の健康状態や生活習慣を改善し、適切なセルフケアを継続することが、インプラント治療の長期的な成功に直結すると言えるでしょう。
インプラント治療で失敗しないための対策とは?
インプラントは「第二の永久歯」とも呼ばれるほど、見た目や噛む力の再現性が高い治療です。しかし、適切な手順やケアを怠ると、炎症やぐらつきなどのトラブルにつながることがあります。
ここでは、失敗を防ぐために大切なポイントを解説します。
経験と実績のある歯科医師を選ぶ
インプラントは外科的な手術を伴うため、医師の経験や診断力が成功を大きく左右します。
CT撮影や3Dシミュレーションをもとに、骨の厚み・神経の位置をしっかり把握したうえで治療を行う医院を選びましょう。
また、学会所属や認定医資格の有無も、信頼性を判断するひとつの目安になります。
事前検査をしっかり受ける
インプラントの成功には、骨や歯ぐきの状態を正確に把握することが重要です。
血液検査やCTによる精密検査を行い、糖尿病や骨粗しょう症など全身疾患との関連も確認しておきましょう。
特に骨の量が少ない場合には、「骨造成(こつぞうせい)」と呼ばれる処置を行うことで、
より安定した埋入が可能になります。
術後のケアを怠らない
手術が成功しても、術後のケアが不十分だと失敗につながります。
歯磨きやフロスを使った丁寧な清掃を心がけ、プラーク(歯垢)をためないようにしましょう。
また、定期的なメンテナンスでインプラント周囲のチェックやクリーニングを受けることで、
インプラント周囲炎(歯周病のような炎症)を防ぐことができます。
生活習慣を見直す
喫煙や強い食いしばりは、インプラントの寿命を縮める要因になります。
タバコの煙に含まれるニコチンは血流を悪化させ、骨との結合を妨げることがあります。
また、睡眠中の食いしばりや歯ぎしりがある場合は、ナイトガードの使用をおすすめします。
異変を感じたら早めに受診
「少しぐらつく」「噛むと違和感がある」などの小さな変化を放置すると、
炎症や骨吸収が進み、インプラントが脱落するリスクもあります。
違和感を覚えたら、すぐに歯科医院へ相談することが何より大切です。
早期に対応すれば、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。
万が一インプラントが失敗してしまった場合の対処法
細心の注意を払っていても、インプラント治療がうまくいかない可能性はゼロではありません。 万が一トラブルが発生した場合、感情的になってすぐにクレームや訴訟を考えるのではなく、冷静に対処することが重要です。 多くの歯科医院では保証制度を設けており、返金や再治療の対象となるケースもあります。 まずは問題の状況を正確に把握し、適切な手順を踏んで解決策を探っていく必要があります。
まずは治療を受けた歯科医院に相談する
インプラント治療後に痛みや腫れ、ぐらつき、見た目の不満など、何らかの異常や気になる点があれば、まずは治療を受けた歯科医院に速やかに連絡し、相談することが第一です。
自己判断で放置してしまうと、状態が悪化してしまう可能性があります。 担当した歯科医師が、現在の状況を最もよく把握しているため、原因の究明と適切な初期対応を期待できます。
多くの歯科医院では治療後の保証期間を設けていますので、保証規定に基づいた対応が可能かどうかも含めて、まずは冷静に話し合うことが問題解決への近道です。
改善しない場合はセカンドオピニオンを検討する
治療を受けた歯科医院に相談しても問題が改善されない場合や、医師の説明に納得できない、提案された対処法に不安を感じる、といった状況であれば、別の歯科医院でセカンドオピニオンを求めることを検討しましょう。
第三者である専門家の客観的な意見を聞くことで、現在の状況をより深く理解できたり、別の治療の選択肢が見つかったりすることがあります。
セカンドオピニオンを求める際には、これまでの治療経過がわかる資料(レントゲン写真、CTデータ、治療計画書など)を持参すると、より的確なアドバイスを受けやすくなります。
インプラントの再治療は可能なのか?
インプラントが失敗してしまった場合でも、条件によっては再治療(やり直し)が可能なケースは多くあります。
例えば、インプラントが抜けてしまった場合、その原因(感染など)を取り除き、骨の状態が回復すれば、再度インプラントを埋入することができます。
ただし、インプラント周囲炎などによって顎の骨が広範囲に失われている場合は、骨を増やすための手術(骨造成)が必要になるなど、リカバリーの難易度は高くなります。 インプラントの再治療は初回の手術よりも高度な技術と診断力が求められるため、経験豊富な歯科医師に相談することが極めて重要です。
まとめ
インプラント治療の失敗には、歯科医師の技術不足から患者自身のケア不足まで様々な原因が考えられます。
しかし、失敗のリスクは、信頼できる歯科医院を選び、治療前に自身の健康状態を正確に伝え、治療後は指示されたメンテナンスを継続することで大幅に低減させることが可能です。
インプラントは、一部の特殊なケースを除き、公的医療保険が適用されない自由診療です。
高額な費用がかかるからこそ、後悔しないために治療に関する情報を十分に収集し、メリットとデメリットをよく理解した上で、慎重に判断することが求められます。