「ワイヤー矯正とインビザライン、どっちを選べばいいの?」
歯列矯正にはさまざまな種類があるため、いざ治療を始めようとすると迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
代表的なのが、ワイヤー矯正とインビザラインをはじめとするアライナー矯正です。見た目の違いだけでなく、治療の進め方や向いている症例にもはっきりと違いがあります。
本コラムでは、両者の特徴やメリット・デメリットをわかりやすく比較しながら、自分に合う矯正方法はどちらなのか見つけるための判断ポイントをお伝えします。矯正治療に踏み出す前に、ぜひご参考にしてください。
ワイヤー矯正とは?
ワイヤー矯正とは、歯の表面に「ブラケット」と呼ばれるパーツを接着し、ワイヤーを通して歯を動かす治療法です。
軽度の歯並びの乱れから、抜歯が必要な複雑な症例、骨格的な問題が関わる不正咬合まで、幅広い症例に対応できます。
従来は金属製の装置が主流で見た目が気になるという声もありましたが、近年では半透明や白色のセラミック製ブラケットなど、目立ちにくい選択肢も増えています。
装置は歯科医師が固定するためご自身で取り外せません。
ただし、取り外し可能な矯正装置と異なり、計画通りに治療を進めることができます。
インビザラインとは?
インビザラインとは透明なマウスピース型矯正装置です。
透明なアライナー(マウスピース)を定期的に交換しながら、段階的に歯を動かしていきます。
食事や歯磨きの際にはご自身で取り外せるため、普段通りに食事を楽しむことができ、口腔内を清潔に保ちやすいというメリットも持ち合わせています。
ただし、1日20〜22時間の装着が必要であり、ご自身での徹底した管理が治療結果を大きく左右するため、患者さまによっては向き・不向きもあります。
主に軽度から中等度の不正咬合に適しており、ワイヤー矯正と比較して痛みが少ない傾向にあります。
【比較】実際の治療期間・費用・通院頻度の違い
ワイヤー矯正とインビザラインでは、治療にかかる期間や費用、通院頻度が異なります。本章ではそれぞれの目安を解説します。
治療期間の目安
いずれの場合も、一般的な治療期間の目安は2〜3年程度です。全体の歯並びを動かす場合や複雑な症例では、治療期間が長引くこともあります。
費用の目安
それぞれの矯正治療における費用相場は以下の通りです。
・ワイヤー矯正:表側矯正は約60〜100万円(※裏側矯正は約90〜140万円)
・インビザライン: 約30〜100万円
費用は、治療する範囲や歯並びの状態によって大きく変動します。部分的な治療(軽度のすきっ歯や前歯のガタつきなど)であれば全体的な治療に比べて、費用を抑えられます。
通院頻度の目安
通院頻度の一般的な目安は以下の通りです。
・ワイヤー矯正:1か月に1〜2回程度
・インビザライン:1.5〜2か月に1回程度
ワイヤー矯正は、ワイヤーの調整が必要になるため、インビザラインに比べて通院頻度が高くなる傾向があります。
ただし、患者さんの状態によって必要な通院頻度は異なるため、担当の矯正歯科医の指示に従ってください。
適応症例の判断基準
ワイヤー矯正とインビザラインでは、得意とする歯並びや適応できる症例が異なります。歯科医師がどちらの治療法を提案するかは、精密検査の結果に基づいて判断されます。
インビザラインが向いている症例
インビザラインは、比較的軽度から中等度の不正咬合の改善に適した治療法です。具体的には、以下のような症例が挙げられます。
・軽度から中等度の叢生(歯のガタガタ)
・軽度から中等度のすきっ歯
・軽度の出っ歯や受け口
・前歯を中心とした部分的な改善
インビザラインは、歯列全体を後方へ移動させたり、歯を傾斜させて隙間を閉じたりする動きに適しています。
そのため、歯の重なりが比較的小さい叢生や、前歯の隙間、歯の傾きが原因の軽度な出っ歯などの改善に適しています。
また、奥歯のかみ合わせに大きな問題がない場合の「部分矯正」にも対応しやすいのが特徴です。
ワイヤー矯正が向いている症例
ワイヤー矯正は、以下のように歯を大きく動かす必要がある複雑な症例や、より精密なコントロールが求められる治療に適しています。
・重度の叢生、出っ歯、受け口
・抜歯を伴う矯正治療
・骨格的な問題を伴う不正咬合
・奥歯のかみ合わせを含めた、複雑な歯の移動が必要な症例
ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーで歯に強力かつ持続的な力を加え、歯根ごと平行に動かす「歯体移動」を得意とします。
そのため、抜歯で生まれた広いスペースへ歯を大きく動かす必要があったり、骨格的な問題が関わったりする複雑な症例において、良好な治療結果が期待できます。
迷ったら?ご自身に合った治療法を選ぶための3つのポイント
「結局、自分にはどちらが良いの?」と迷われた際は、以下のポイントを参考にしてください。
1. 治療中の見た目や快適性を優先するなら「インビザライン」
以下のようなご希望を持つ患者さまにはインビザラインが適しています。
・見た目を重視したい
・ストレスなく食事を楽しみたい
・口内炎などのトラブルを極力減らしたい
インビザラインは透明で目立ちにくく、食事や歯磨きの際にはご自身で取り外せるため、矯正治療中のQOL(生活の質)を高く保ちやすいのが大きなメリットです。また、装置の表面が滑らかなため、ワイヤー矯正に比べて口内の粘膜を傷つけにくく、口内炎のリスクも低減できます。
2. 対応範囲の広さと確実性を優先するなら「ワイヤー矯正」
以下のように幅広い症例への対応力や、より確実な治療結果を優先したい患者さまにはワイヤー矯正が適しています。
・自己管理に自信がない
・幅広い症例に対応できる方法が良い
・治療期間をできるだけ短くしたい
ワイヤー矯正は固定式の装置のため、インビザラインのように装着時間を守るといった患者さまご自身での管理は不要です。
また、対応できる症例の幅も広いため、より確実性が高い治療法といえます。さらに症例によってはインビザラインよりも歯を効率的に動かせるため、結果的に治療期間が短くなる可能性もあります。
3. 精密検査をもとに歯科医師との相談で決定する
見た目やライフスタイルだけで治療法を決定するのは困難です。最も重要なのは、矯正歯科医による精密検査を受け、ご自身の歯並びや顎の状態を正確に把握することです。
そのうえで、歯科医師からそれぞれの治療法のメリット、デメリット、限界について十分な説明を受け、ご自身の希望を伝えることが後悔のない治療選択につながります。複数の歯科医院でカウンセリングを受け、セカンドオピニオンを求めるのも有効です。
まとめ
ワイヤー矯正とインビザラインは、どちらも優れた矯正治療法ですが、それぞれに異なる特徴と得意な症例があります。
ワイヤー矯正: 幅広い症例に対応できる治療法
インビザライン: 目立たず快適性が高い一方で、自己管理が求められ、適応症例が限られる治療法
どちらの治療法がご自身に適しているかは、歯並びやライフスタイルによって異なります。
当院では、患者さん一人ひとりのご希望やお口の状態に合わせた矯正治療をご提案しております。歯並びでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。